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2017年8月

2017年8月21日 (月)

関西支部会&相談会 -Q&A-

8/20㈰に、膵の会-関西支部会&相談会-が開催されました。

その時の-Q&A-をまとめましたので、ご報告致します。

*

(伊藤先生より、)

まず、はじめに。

膵炎は特殊ではありません。腹痛のある人100人を対象に調べてみると、2割ぐらいが膵炎で引っ掛かります。残りの25%が逆流性食道炎あるいは胃潰瘍です。逆流性食道炎や胃潰瘍と比率的にさほど差はないので、珍しい病気だと思って悲観しないでください。ただし、根治治療は存在しないので、食生活は気を付けなければなりません。

Q1:膵臓に痛みがあっても膵酵素等の上昇が伴わないこともありますし、逆にこれといった自覚症状がないのに膵酵素等が高くなっていることもあります。どうしてこういうことが起こるのでしょうか。

A:トリプシンもリパーゼも膵臓にしかない消化酵素なので、これが高値であるということは何かしら膵臓に問題があるということになります。検査結果をみるとわかりますが、「基準値」であって、「正常値」とは書いてありません。基準値内にあるからといってそれが本当に正常値なのかどうかはわからないし、その人によって正常値は違います。トリプシンの数値が500で基準値以内だったとしても、その人の本来の基準が100ぐらいだったとしたら、500でも異常があることになります。内科医は内視鏡をして逆流性食道炎が見つかると、逆流性食道炎ということにしてしまいますが、もしかすると逆流性食道炎+膵炎かもしれないのです。自覚症状と数値は一致しないこともあるので、自覚症状は大事です。

Q2:特発性慢性膵炎と診断されており、急性膵炎も何度も経験しています。ストレスが膵炎の原因だと言われますが、ストレスだけで何度も急性膵炎を起こすものなのでしょうか。

A:正確な答えはありませんが、ストレスは原因になりえると考えます。胃腸や膵臓というのは交感神経と副交感神経の関係で動いていますが、ストレスで自律神経が乱れると、膵臓が働かなくてもいいのに、働きすぎた状態になることがあります。ストレスでよくあるのは胃の調子が悪くなることですが、胃酸が出すぎると膵臓の役割として、重炭酸=アルカリ性の膵液をたくさん出して、十二指腸で胃酸を中和しようとします。胃酸がどんどんでて、膵液を次々出していくと、膵炎を起こしかけているような人だと、それがきっかけで膵炎を起こすことがあるので、ストレスも引き金の一つには十分なりえます。

 

Q3:膵炎食における推奨食品というものはあるのでしょうか。糖質を中心に摂取するよう指導されますが、糖質を摂りすぎると糖尿病の原因になるのではないかと気になります。また、消化剤をしっかり服用した上で脂質を1日に50~60g摂ってもよいという考えもあるようですが、これについてはどのようなご意見をお持ちでしょうか。

A:基本的には慢性膵炎の人は脂質制限はせざるを得ないでしょう。患者さんを診ていると食事が原因で悪化される方は多いので、脂質制限はせざると得ないものだと考えます。ただ、ケースバイケースで症状がなければ、食事は大切なものなので少しぐらい食べてもいいと思います。血液検査で栄養状態を調べて、コレステロールが低すぎたりする場合には補う必要がでてきますが、そうでなければ栄養は足りているということになります。たんぱく質や脂質のバランス、亜鉛、カルシウムのミネラルバランスを見て、数値なども調べて、消化吸収障害が起こっていないかどうかをみていく必要があります。採血で糖尿病の検査をして問題なければ、糖質をしっかりとっていただいて問題ありません。糖尿病が気になるのはわかりますが、膵臓食は糖質中心にならざるを得ません。おやつを食べる時には洋菓子ではなく、和菓子にしておきましょう。膵性糖尿病になると食事療法は変わってきます。

 

Q4:慢性膵炎が進むと膵酵素が上昇しなくなるそうです。いわゆる非代償期に進む前に前兆となるようなものは何かあるのでしょうか。

A:前兆となるようなものはなかなかありませんが、もともと膵酵素が高かった人が下がりきってしまうようになると注意が必要です。非代償期になると、膵酵素が感度以下(測定不能)となることがあります。これは膵臓が燃え尽きてしまっている状態です。膵臓が潰れて膵酵素があがるので、膵臓が潰れてしまうと膵酵素もあがらないようになってしまいます。糖尿病や消化吸収障害が出てきたり、石灰化が進んでいるのは非代償期への一つの目安にはなります。


Q5:機能性胃腸症と診断されている患者さんの中に慢性膵炎の患者さんがいる一方で、慢性膵炎と診断されていても実は機能性胃腸症である、ということがあるとお聞きします。この二つの病気を鑑別する際のポイントはどこにあるとお考えでしょうか。

A:機能性胃腸症という病気は「他の疾患を除外した場合」という診断基準があるのですが、この除外診断の際に、膵酵素を測定していないことが多いです。胃内視鏡とエコー検査のみで除外されていることもありますが、エコーで膵臓の異常が見えるのは、かなり症状が進んでからになります。また、アミラーゼのみでは膵酵素が引っかからなかったとしても、トリプシン・リパーゼまで測定すると異常値を示す人が増えます。アミラーゼのみで膵炎を調べていると、漏れが出てくるのです。他に特に疾患が見つからない場合に、診断的治療によって膵炎がわかる場合もあります。


Q6:重症急性膵炎が治癒しても、その後慢性膵炎になる可能性はありますか?

A:あります。膵臓の障害は残っていると考えたほうがいいでしょう。そもそも、ERCPで膵炎が起こるのも、ファイター乳頭に何かがあるからとも考えられます。


Q7:自己免疫膵炎の血液検査でIgG4が正常値でも、自己免疫性膵炎であることはあるでしょうか?

A:あります。IgG4が正常でも、IgGや抗核抗体が+なら可能性はあります。特徴的な腫れ方があれば、自己免疫性膵炎を疑います。日本の診断基準にはありませんが、海外の診断基準にはステロイド反応性もあります。自己免疫性膵炎はそんなに長期にステロイドを服用しなくてもいいことが多いので、ステロイドを使ってみるという方法もあります。最終的な診断方法としては、膵生検しかありません。腫瘤形成性膵炎との区別には膵生検が必要です。


Q8:慢性膵炎の予後はどうなっていますか?

A:慢性膵炎の終生死亡率が数倍あがるという結果はありますが、何年でどうなるかとか、長期予後の統計は取っていません。というのも、慢性膵炎は確診、準確診、早期慢性膵炎、疑診と四段階あり、その段階によっても異なるからです。早期慢性膵炎は診断基準が出来てから間がないので、まだその予後がどうなるかわかっていませんが、早期慢性膵炎や疑診の患者さんはあまり進行しないことが殆どです。今の病院では、数年単位ですごく進行したという患者さんは今のところいません。予後をよくするには、食生活を含めた生活習慣が大事になります。悪化しているのはほとんどがアルコール性です。特発性や自己免疫性の人は薬を服用して、生活習慣に気を付けていれば、心配はありません。


Q9:膵嚢胞ががん化することはありますか?

 A嚢胞=IPMNではありません。しかし、主膵管にそって嚢胞があるときや、嚢胞が粘液質である場合にはIPMNを疑います。嚢胞があると発がん率は高くなるので、検査を続けていくことが大切です。膵管に沿っていない単発の嚢胞でもがん化した例も、少ないですがあります。


最後にエレンタールについて。

エレンタールは膵炎の発作を抑えるというデータがありますし、
脂質がほぼゼロなので、一食をエレンタールに置き換えることで、
他の食事の脂質をあまり気にしなくてもよくなるのでお勧めです。
ただし、エレンタールは栄養が濃いので、一気に飲むと下痢をします。
ボトルに入れて作って冷蔵庫に保管し、
コップに移し替えてちびちびと飲んでください。
(口飲みは雑菌が入るので、良くありません)

2017年8月15日 (火)

小慢・指定難病、追加希望疾患名について

昨年に続き、今年もネットワークさんからこのようなメールを頂きました。
*
【今回、新しく小慢に指定してほしい疾病(及び、指定難病)を、難病ネットワークでは、
日本小児科学会と連携して要望書を提出したいと考えております。
そこで、皆さまにご協力をお願いしたいのですが、新しく小慢に指定してほしい疾病の要望を
お知らせ頂けると幸いです。】
*
膵の会ではこのようにお返事致しましたので、ご報告申し上げます。
*
小慢について
①若年性特発性慢性膵炎
②自己免疫性膵炎(IgG4関連疾病として)
(前回ご提出時と、同じ内容です)
*
指定難病について
①若年性特発性慢性膵炎
②遺伝性膵炎(PRSS1以外)
*
なお、
小児慢性特定疾患情報センターのHPは、こちらです↓
*
難病情報センター

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