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2023年1月

2023年1月24日 (火)

zoom相談会【議事録】2022.11.22

 大変お待たせしました。

 昨年11/22に行われましたzoom相談会の議事録をご紹介させていただきます。

質問が多岐にわたり、大変興味深い内容となりました。

たくさんの皆さまにお読みいただきたいと思っております。

 

ZOOM相談会【議 事 録】

目  的    膵の会 先生とzoom相談会

開催日時    20221122日(火)19:0020:00

場  所  オンライン

アドバイザー

順天堂医院 小児科 鈴木光幸(すずき みつよし)先生

神栖済生会病院 小児科 中野 聡(なかの さとし)先生

 

【事前にいただいた質問事項について鈴木先生からの回答】

 Q)9月に鈴木先生に診察していただいてから今日まで膵炎にならずに頑張っています。

脂質の目標10g/1日ですが、ようやく6g/1日になりました。

現在2週間に1回通院して血液検査をしていますが、他の検査をしていません。

通院先からは次に入院してからで良いといわれています。

エコーやMRI等の検査して欲しいと思いますが、そういった詳しい検査は本来どのくらいの頻度でやったらいいのでしょうか?

 

A画像検査の実施間隔については特に決まりは有りませんが、2週間に1回の血液検査をしていれば膵臓の状態は十分に把握ができると思います。当院では、状態が安定しているお子さんでは採血は3-4か月に1回のペースですので、2週間に1回は結構な頻度だと思われます。

エコーは3か月に1回程度で良いのではないでしょうか。また、地域によって医療費負担などが違いますし(エコーも毎回施行すると費用がかかる)、MRIとエコーでも費用負担や侵襲性(時間がかかる。年少児では鎮静剤の点滴を必要とするなど)の違いもあります。

血液検査だけで状況が把握できるのであれば、それでもいいですし、お子さんや膵臓の状態によっても、見るべきポイントが変わってきます。一律には難しいのですが、お腹が痛くない、血液検査の結果も良好であれば、侵襲性の低いエコーを3か月に1回程度行えばよいのではないでしょうか。エコーで膵臓の形態に変化が生じているようならMRI2-3年に1回等で充分です。

 

 Q)99か月の女子です。2歳半で発症し今までに7回入院していますが、29か月入院せずに過ごせています。脂質は13g 15g~17g/1日まで上げています。体重は24kgです。

タンパク栓が詰まらないようにするにはどうしたらいいでしょうか?

新しい治療はありますか?

 

A)新しい治療はありません。

一番大事なのは食事です。過食は避けるようにお願いします。思春期にも入ってきます。身長のスパートが起きる時期でもありますので、1日に必要なカロリーのギリギリぐらいまでを目安に、無理せずに栄養を増やすことが大切です。

29か月も膵炎を起こしていないのであれば、膵管の形態学的変化はほぼ無いのではないでしょうか。自信をもって栄養を増やして体格を大きくすることで、膵管が太くなり結果的に蛋白栓が詰まりにくくなります。しっかり栄養を取って体を大きくするのが近道です。

タンパク栓の予防についてはビソルボン(気管支炎、タンを出す薬)が効果的なお子さんもいるようです。しかし、有効性に関する証拠(エビデンス)はありません。

蛋白栓で膵管が詰まって膵炎を発症したら、そのまま膵液の圧が上昇し自然に抜けるのを待つか、内視鏡的に取るしかありません。詰まらないように、膵管も成長して大きくさせるのがいいでしょう。無理せず、カロリーを少しずつ増やしていきましょう。

 

Q)現在8歳の男子です。入院が今までに4回(発症は38ヶ月、その後62ヶ月、67ヶ月、74ヶ月)。最後の入院から8ヶ月位が経ちました。

一日脂質10g(68gの時もあり)、一日3回リパクレオン2錠、フオイパン1錠、ブロムヘキシン半錠、エレンタール一日2本で、遺伝性膵炎の疑いで経過観察中です。

今のような状態を維持したまま成長した時に、将来どのくらいまで脂質は上げていけるものでしょうか?

 

A)遺伝性膵炎の疑いで経過観察中とのことですが、原因をはっきりしてもらう必要があります。それによって対応が違ってきます。例えば遺伝性膵炎でもタイプがありますし、また膵管の形態学的異常、あるいは元々の生まれ持った体質的な膵管異常の場合もあります。その場合は治療を受ければ治ります。検査を受けて、そこをハッキリさせる必要があります。

保護者の方より(遺伝子検査済。ERCPを1度受け、合流異常はなかったとの説明あり)

膵炎を繰り返したのは、膵炎が起こった時に膵管内の壁が不整になり、そこに蛋白栓が引っかかり、それが核になり徐々に蛋白栓が大きくなり、膵管閉塞をきたすことが理由の1つに挙げられます。また、炎症により膵管自体が細くなり、そこにゴミ(蛋白栓)が詰まって膵炎を起こしやすくなります。しかし、膵炎を起こさない状態が半年以上経つと、膵管壁がスムーズになって、蛋白抜が引っかからなくなると再発しにくいサイクルに入ってきます。あと4か月ぐらい維持して、そのあとから少し脂質を上げて体を大きくする方向へもっていったらどうでしょうか。膵管の形態が戻ってくるので、脂質を上げることが出来るようになってきます。あまり怖がらないで脂質を上げてみましょう。起こしてしまうときは起こしてしまうのですが、体が大きくならないと、治るものも治りません。体が大きくなることで膵管が大きくなれば、膵炎も起こしにくくなります。

 

 Q)風邪などの体調不良の時に、うんちの色の変化が数日から1週間ぐらい続くことがあり心配になります。

白みの強い黄色や灰色に近い緑などがありました。

色の変化で気にした方がいい場合はありますか?

 

A)胃腸炎のときは色が変わることがよくあります。胃腸炎であれば、34日で戻ります。一般的に白、灰色が普通の時も出る場合は早く病院へ行った方がよいでしょう。便は空気に触れると色が変わってしまうことがあるので、写真を撮っておくとよいでしょう。緑の場合は、(胆汁が排出されているので)胆汁の色なので問題ありません。大丈夫です。

 

Q)70代の母のことでご相談します。

19年慢性膵炎と言われていましたが、具合が悪くなり精密検査を受けましたら、「急性膵炎を繰り返している」と、真逆のことを言われました。

すい臓が腫大してIPMNがあり、粘性の膵液が渋滞を起こして疼痛になると診断され、ビソルボン処方になり、熱も下がり痛みも少しずつ楽になったようです。

そちらの先生から、「お母さんは遺伝性膵炎かもしれないが、その検査をする場合は大学病院での自費検査になる」と言われました。高齢ですし疲れている様子だったので、(その時は)遺伝子検査のことはお断りしたのですが、この際ハッキリさせた方がいいのでしょうか?

 

A)遺伝性膵炎の検査は、今年の4月より保険で出来るようになりました。ただし、遺伝子カウンセラーが病院にいる、遺伝子検査施設と契約する等の施設条件があります。大学病院クラスであれば検査は可能と考えますので主治医とご相談ください。研究として無料で施行している施設もあります。また、「慢性膵炎と言われていたのに、急性膵炎を繰り返していると言われ真逆に感じた」とのことですが、実は真逆ではありません。急性膵炎と反復性膵炎、慢性膵炎は別の病気ではなく、徐々に進んでいく過程のどこで見ているのかという事です。この流れの中で病名が変わっていきます。

高齢でも遺伝子検査するべきかどうかという点については、ご本人次第です。「遺伝性膵炎」なのかを知ることで、今後どのように生活していこうかと考えることができます。すい臓がんが一番厄介になりますが、将来ならないための動機付け・意識付けになります(禁酒をするとか、禁煙をするとか)。現在、ビソルボンを飲み落ち着いていて、ご本人に検査の気持ちが無ければ、検査をせず様子をみてもよいと考えます。

 

Q)娘が膵全摘自家膵島移植を受け、3年が経ちました。

膵全摘自家膵頭移植の海外実績と、海外でのオペ対象年齢。

オペ後のインスリン使用率や、インスリンフリー率。

インスリンフリーの場合、何年ぐらいインスリンフリーで生活できているか?

日本ではインスリンフリー患者がいないようなので、海外の実績を伺ってみたいです。

 

A)国立国際医療研究センター 膵島移植センター 霜田雅之先生より、ご回答をいただきました。

もっとも公平なデータとしましては、CITRという国際レジストリーがあります。

日本のデータは残念ながら含まれておらず、欧米が中心です。

 

https://citregistry.org/content/reports-publications-presentations

このデータの中に、慢性膵炎等に対する膵全摘自家膵島移植のデータがあります。かなり詳細です。ただし、個々の患者さんの予測はできず、統計上の平均になります。

 

今年出た最新版によると、

・海外実績:1233名が実施されています。

ただし、日本のように登録されていない症例も結構あると思われますので、少なくとも1233名で実際はもっといるということです。

・海外でのオペ対象年齢 :このデータでは12歳未満として示されていますが、聞いた話では海外では3歳から行っている施設もあるようです。幅広い年齢層で行われています。日本では、私どもの臨床試験で18歳〜70歳です。

 

・オペ後のインスリン使用率:術前から糖尿病の方も含まれていますが、全体として60-80%くらいのようです。個人差および術前の糖尿病状態による差が大きいです。

・インスリンフリー率。:上の質問の反対で、全体として20-40%くらいのようです。術前糖尿病でない・女性・若年層などの患者さんが成績が良いです。

 ・インスリンフリーの場合、何年ぐらいインスリンフリーで生活できているか?:

直接的に回答できるデータは示されていませんが、全体としては1年目のインスリンフリー率と5年目のインスリンフリー率はあまり変化がないので、多くの患者さんでは一旦インスリンフリーになった方は5年以上持つと思われます。

それ以上の長期となるとまだはっきりしたデータはありません。

ただ一般的には、年月が経つと徐々に機能は低下していくと思われます(一般人口においても、加齢により糖尿病を発症する方が増えるのと同じです)。

 

なるべく長持ちさせるためには、一般の糖尿病予防と同じく、肥満を避け、良い食生活や適度な運動、ストレスをためないなどが推奨されます。アルコールの飲みすぎや喫煙はリスクになります。以上になります。

 

ここで、鈴木先生より膵島移植について補足説明をしていただきました。

遺伝性膵炎の患者さんは膵炎を何度も繰り返すので、慢性的な痛みで学校に行けない・仕事に行けない、といったことが起きます。また、すい臓がんになるリスクも高いので「すい臓を全部取ってしまえば根源は断てるだろう」といった考えで、この膵島移植の手術が始まりました。

ただ、全部取ってしまうと糖尿病になります。それを予防するためにどうしたらいいかというと、取ってきたすい臓の(なるべく若いうちに)細胞をバラバラにし、インスリンを分泌できる細胞だけを集めて、肝臓に注入します。すると肝臓の中でインスリンを分泌する細胞が生着し、ご飯を食べるとそこからインスリンが出るので、糖尿病の治療をしなくていい、という手術になります。理想的に聞こえますが、実際には膵臓を全部取るのは大手術になりますし、肝臓の中にインスリン分泌細胞が生着しない場合には、インスリン注射が必要となり完璧な治療というわけではありません。

 

【鈴木先生と患者会参加者との質疑応答】

Q)食事以外で風邪や疲れによって膵炎が起こりやすくなるとよく言います。膵臓の酵素が上がりやすくなるのはどうしてか教えてください?

 

A)理由は大きく2つあります。

まず胃腸炎にかかった場合、10%ほど症例で、程度の違いはありますが血中アミラーゼ値が上がります。胃腸炎になると腸の壁がむくみ、腸に接している膵管の出口もむくみます。それによって、膵液の流れが滞るからです。また、風邪や疲れなどで腸の動きが悪くなると、膵液の分泌が滞るためアミラーゼが上がりやすくなります。

 

Q)慢性的にアミラーゼ、リパーゼが高く、腹痛も常にあります。息子がサッカーをしていますが、気をつけた方が良いことはありますか?

 

A)本人が出来るのであれば、特に運動に制限はありません。どんどんやってください。

体格が大きくなって解決することもありますので、体調が良い時には、栄養をたくさん取って体を大きくしていきましょう。

 

Q)膵全摘自家膵島移植をして、3年半経ちました。ときどき、いまだに左のみぞおち(膵臓があった場所)が痛いときがあります。癒着が原因でしょうか? 何か関係しているのでしょうか?

また、胆管炎にならない方法はありますか? 1年に2回ぐらい胆管炎を起こします。今は胆管が焼き鳥の串ぐらいの太さだそうで、プラスチック製のステントを2本入れました。今は自然に流れ出たようで、ステントが入っていない状態です。次は金属のステントになるそうで心配です。

 

A)大きい手術なので癒着はあると思います。

主治医から小分けにしてご飯食べてくださいとのアドバイスはあったでしょうか。

手術の際に胃も切っているので、一度にたくさん食べると胃や腸が無理に動きます。肝臓からの胆汁が途中から混ざることになるので、流れも悪く全体的な食べ物の流れが滞ってしまうのです。

これはずっと続きますので、痛くなったら無理せず消化いいものをよく噛んで食べましょう。

リパクレオンを上手く活用し、おやつの時に少し飲んだりしてもいいでしょう。

 

胆管炎にならない方法についてですが、術後何年経ってもそのリスクはあります。手術前提の話は難しいですが、金属ステントは手術を先延ばしにする役目がありますので、もしそれでも胆汁の流れが滞り胆管炎を繰り返すようなら手術になるのではないでしょうか。一般的な注意事項ですが、バランスよく食べ、運動をして、量を食べすぎないことが大切です。食べ過ぎは痛みの原因になりますので、調整していきましょう。

 

A)特発性膵炎で17年経ちました。当初遺伝性膵炎の疑いがありましたが、検査は受けていません。今分かっている遺伝子はどのくらいありますか?

また、「特発性膵炎の方も、実は遺伝子異常を持っている」可能性が高いのではないかと思うのですが、どのようにお考えですか?

 

A)1996年前に、遺伝性膵炎の原因遺伝子が初めて報告されました。解明された遺伝子の他にも原因が分かってきていて、現在10種類ぐらいの遺伝子が知られています。将来的には他にも関連遺伝子の関与も明らかになるかもしれません。時間がたつと知識が整理されて、(可能性が高いかどうかは別の話になりますが、)特発性膵炎の方でも、遺伝子異常の要因を持っている方がいる可能性があります。

 

Q)知人の話です。17歳の時に膵炎を発症し、20年後に潰瘍性大腸炎になったので、「17歳の時に発症した膵炎は、自己免疫性膵炎だったのではないか?」と思われたそうですが、このような症例をご覧になったことはありますでしょうか? 

 

A)軽い潰瘍性大腸炎の初発が膵炎だった、というのは、実はよくある話です。(20年前の話なので因果関係があるかは難しいですが。)自己免疫性膵炎には2つタイプがあることが知られています。1型がIgG4関連疾患と呼ばれます。2型は、(比較的若年で)クローン病や炎症性腸疾患に合併することが多いです。治療としては両者ともステロイドが効くようです。

 

Q)次男が慢性膵炎の疑いですが、原因がはっきりしません。生まれつき膵管が細く、長男も癒合不全があります。将来的な治療として薬以外の対処はステント治療があると思いますが、他にどういった手段があるのでしょうか。

また、次男は腹痛があり、膵炎を起こすのが怖くてご飯を少ししか食べられません。エレンタールも苦手です。エレンタール以外のサプリや何か良い手立てはありませんか?

 

A)お子さんの場合、(癒合不全でも)体が大きくなるのが一番です。

癒合不全で副膵管をメインにすい液が流れている人はたくさんいますが、普通に生活をして、膵炎が起こらない人もたくさんいます。体格が良くなれば、膵管が太くなり膵液の流れも良くなるし、ずっとそういった形態であれば、体が反応して流そうとする力が働くはずなので、段々起こさなくなる可能性があります。

 

また、食事についてですが、普通に栄養のバランスを考えて摂取(献立)を考えましょう。腹痛の原因が慢性膵炎だけなのかというと、胃腸の動きが悪いなどもあります。全部が慢性膵炎のせいではなく、食の好み・環境なども関係してくるので、お子さんの食事作りは大変だと思いますが、保護者の方に頑張っていただいて食事のバラエティが増えることを期待したいところです。

 

Q)22歳で慢性膵炎ですが、食事制限を受けていません。

今までステントを2回入れて、落ち着いています。ステントは自然に抜けました。

膵臓が普通の半分ぐらいの薄さだと言われています。進んでいるのでしょうか?

脂質が多いメニューを、罪悪感を感じながら食べています。膵炎にならなければ、食べていいのでしょうか。

 

A)お腹が痛くないなら食べても大丈夫です。(下痢便が出る、糖尿病の一歩手前など、)慢性膵炎にもステージがあります。今のステージがどうなのか分かりませんが、明らかな異常所見があってステントを入れたのでしょうから、脂質は少し抑えて、薬を飲みながら栄養を取るのがいいでしょう。膵臓が萎縮していて膵臓の組織が傷んでくると、逆に膵炎が起こらなくなります。また、痛む場所がなくなってきます。慢性膵炎の末期になると、血中アミラーゼ値が上がらなくなります(膵臓機能の廃絶)。食事内容に関しては主治医に確認してから調整をしましょう。

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